薬機法をわかりやすく解説!事業者が注意するべき広告規制や違反表現と罰則
化粧品ビジネスに携わる上で、薬機法の理解は避けて通れません。特に2021年の法改正で導入された課徴金制度は、違反広告が事業に与える影響をより深刻なものにしました。本記事では、薬機法の基本から化粧品広告で許される表現、違反時の罰則まで、業界の担当者が知るべき情報を解説します。
●目次
薬機法とは?化粧品ビジネスの基本ルール
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の5つのカテゴリーを対象とし、その品質、有効性、安全性を確保するために制定された法律です。
このような厳しい法律が必要な背景として、これらの製品が人の生命や健康に直接的な影響を与える可能性があることが挙げられます。効果が不明確なものが「効く」として販売されたり、安全性が確認されていない成分が使用されたりすれば、消費者の健康被害や経済的損失に直結します。薬機法は、こうしたリスクから国民を守る役割を担っています。
・規制対象となるカテゴリー
薬機法が規制する対象は「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」の5つです。化粧品は「人体に対する作用が緩和なもの」と定義され、スキンケア用品やメイクアップ用品だけでなく、シャンプー、歯磨き粉、石鹸なども含まれます。
注意が必要なのは、美顔器などの美容機器や、健康食品、美容雑貨といったカテゴリーです。これらは本来、薬機法の対象外ですが、広告で「肌が若返る」「痩せる」といった医薬品的な効果効能を謳ってしまうと「無承認医薬品」とみなされ、薬機法の規制対象となります。
「化粧品ではないから関係ない」という認識は非常に危険であり、製品の実態と広告表現の両面からカテゴリーを正しく理解する必要があります。
・旧薬事法から薬機法への改正とその背景
かつては「薬事法」という名称でしたが、2014年の法改正により「薬機法」へと名称が変更されました。この背景には、iPS細胞などの再生医療技術の実用化や、医療機器の高度化といった時代の変化に対応する必要があったことが挙げられます。
そして、化粧品事業者にとって最もインパクトが大きかったのが、2021年8月の改正による「課徴金制度」の導入です。これは、虚偽・誇大広告を行った事業者に対し、その売上額に応じた金銭的ペナルティを科すものです。
以前は「バレたら修正すればいい」という安易な考えも一部にありましたが、この改正により、コンプライアンス違反は経営を揺るがす重大なリスクとなりました。行政の監視体制も強化されており、より一層の法令遵守が求められています。
化粧品広告で押さえるべき禁止事項
薬機法の広告規制は、主に「虚偽・誇大広告の禁止(第66条)」「特定疾病用医薬品の広告制限(第67条)」「承認前の広告禁止(第68条)」の3つで構成されています。これらは、消費者が誤った情報に基づいて製品を購入し、健康被害に遭うことを防ぐための重要なルールです。
この中で化粧品広告に最も関係が深く、かつ違反事例が多いのが第66条と第68条です。自社サイトやLP(ランディングページ)だけでなく、SNSへの投稿、インフルエンサーによるPR、アフィリエイト記事なども顧客を誘引する意図があればすべて「広告」とみなされ、規制の対象となります。「知らなかった」では済まされないため、条文の意味を正しく理解しておく必要があります。
出典:厚生労働省「薬事法における広告規制」
・虚偽・誇大広告の禁止(第66条)
第66条は、製品の効能効果や安全性について、事実と異なること(虚偽)、あるいは事実よりも優れていると誤認させること(誇大)を禁止しています。これは、消費者の適正な商品選択を妨げないための規定です。
具体的には、「世界初」「No.1」といった最大級表現は、客観的な調査データがない限り使用できません。また、医師や薬剤師、美容師などが製品を推薦する表現も禁止されています。これは、専門家の権威によって、消費者が「効果が確実にある」「絶対に安全だ」と無条件に信じ込んでしまうリスクを防ぐためです。この条文への違反は課徴金制度の対象となるため、広告制作において最も注意を払うべきポイントです。
・承認前の広告禁止(第68条)
第68条は、承認を受けていない医薬品や医薬部外品の名称、効能効果に関する広告を全面的に禁止しています。化粧品は、あくまで「化粧品」としての届出しかされていないため、医薬品のような効果を謳うことはできません。
例えば、化粧品で「ニキビが治る」「アトピーが改善する」「肌が再生する」といった表現を使うと、それは「承認を受けていない医薬品(無承認医薬品)」の広告を行ったとみなされ、第68条違反となる可能性があります。たとえ使用者の体験談として事実であったとしても、化粧品の効能範囲を超えた表現は一切認められません。
化粧品で認められる効能効果の表現は56項目に限定される
化粧品の広告で表現できる効能効果は、厚生労働省が定めた「56項目」の範囲内に厳密に限定されています。「なぜ56項目しか言えないのか」と疑問に思うかもしれませんが、これは化粧品が「人体への作用が緩和なもの」と定義されているためです。
この範囲を超えた表現は医薬品的な効果とみなされ、薬機法違反となります。一方でこの範囲内であれば、消費者に誤解を与えない程度に表現を工夫することは可能です。まずはこのリストを熟知し、自社製品がどの項目に該当するかを正しく把握することが重要です。
・広告表現の基礎となる56項目一覧
56項目は以下に大別されます。
- 頭皮・毛髪に関する項目(16項目)
- 肌に関する項目(2項目)
- 爪に関する項目(3項目)
- 口唇に関する項目(7項目)
- 歯・口に関する項目(7項目)
- 香りに関する項目(1項目)
例えば、スキンケア製品であれば「肌を整える」「皮膚の水分、油分を補い保つ」「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」などが該当します。重要なのは、これらは「予防」や「現状維持」の範囲に留まっている点です。「シミを消す」「肌質を変える」といった表現は含まれていません。この境界線を理解することが、安全な広告制作の第一歩となります。
出典:厚生労働省「○化粧品の効能の範囲の改正について」
薬機法違反になりやすい広告表現と言い換え例
「美白」「エイジングケア」「浸透」といった、マーケティングで多用される表現には、薬機法を遵守するための厳格なルールが存在します。ビフォーアフター表現や安全性の保証、医師の推薦なども原則として禁止されており、認められる表現には厳しい条件があります。
ここでは、具体的なOK/NG事例を比較し、マーケティング担当者が陥りやすい落とし穴を解説します。
・「美白・ホワイトニング」の表現
一般化粧品では、肌本来の色が白くなるような「美白」表現はできず、ファンデーション等による「メーキャップ効果で肌を白く見せる」という表現のみ許されます。また、「ホワイトニング」は肌を漂白するような誤解を招くため使用しません。
医薬部外品(薬用化粧品)で、美白有効成分で承認を受けている場合、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」という作用機序を併記すれば「美白」の使用が可能です。しかし、「できてしまったシミを消す」「肌が白くなる」といった治療的な表現や肌色変化の表現は、化粧品・医薬部外品ともに全面的に禁止されます。
・「エイジングケア」と「アンチエイジング」の違い
「アンチエイジング」は老化防止や若返りを意味するため、化粧品の広告では全面的に使用が禁止されています。
一方、「エイジングケア」は、「※年齢に応じたお手入れのこと」という注釈を付記し、保湿など化粧品の効能範囲内のケアであることを明確にする場合に限り使用が認められます。言葉の選び方一つで適法か違法かが分かれるため、注意が必要です。
・「浸透」表現は「角質層まで」に定められている
化粧品の成分が浸透する範囲は、皮膚の表面にある「角質層(角層)まで」と厳密に定められています。角質層はわずか0.02mm程度の厚さしかありません。その奥にある真皮層へのアプローチは医療行為の領域となるため、化粧品で謳うことはできません。
したがって、「肌の奥深くへ」「肌の内側まで」といった表現は、たとえ「※角質層まで」という注釈があっても、消費者に「角質層を超えて浸透する」という誤解を与える恐れがあるためNGと判断されます。図解イラストを用いる際も、矢印が角質層を突き抜けていないか、慎重に確認する必要があります。
・ビフォーアフター表現で認められるのは効能効果の範囲内のみ
使用前後の写真を並べる「ビフォーアフター」は、視覚的なインパクトが強く、よく使われる手法ですが、掲載には十分な注意が必要です。写真の加工による捏造はもちろん認められません。また、効果には個人差があるにも関わらず、写真のような結果がすべての人に保証される誤認を生む可能性があります。
認められるのは、効能効果56項目の範囲内の場合です。例えば、ファンデーションでシミを隠している状態や、洗顔料で汚れが落ちた状態など、「塗った事実」「洗った事実」のみを示す場合に限られます。「シミが消えた」「シワがなくなった」といった表現は56項目を超えてしまうので認められません。
・「安全」「安心」を保証する表現や医師の推奨・推薦はNG
「赤ちゃんでも安心」「副作用はありません」といった表現は、安全性を絶対的に保証するものとして禁止されています。また、「〇〇医師推奨」「〇〇大学共同研究」といった、専門家の権威を借りた表現もNGです。
これは、専門家が推薦している事実をもって消費者が「効果が確実にある」と誤認してしまうのを防ぐためです。たとえ事実であっても、広告に使用することはできません。権威付けに頼るのではなく、製品そのものの特長や成分の働きを、事実に基づいて誠実に伝える姿勢が求められます。
薬機法に違反したら?罰則と事業リスク
薬機法違反のペナルティは、行政指導だけでなく、事業の存続を脅かす厳しいものとなっています。特に2021年に導入された課徴金制度は、違反広告に関わる商品の売上額の4.5%が課される強力な経済的制裁です。
刑事罰や措置命令に加え、ブランドイメージの失墜という回復困難なリスクも存在します。違反がもたらす経営へのインパクトを正しく理解しましょう。
・売上額の4.5%が課される「課徴金制度」
虚偽・誇大広告を行った場合、違反期間中(最大3年間)の対象商品売上額の4.5%が課徴金として課されます。例えば、違反広告で年間1億円を売り上げていた場合、450万円の納付が命じられます。3年間なら1,350万円です。
この制度の注意点は、広告主だけでなく広告代理店やアフィリエイター、インフルエンサーなど、広告に関与した「何人も」が対象となり得る可能性があることです。なお、課徴金額が225万円未満(売上約5,000万円相当)の場合は免除されますが、自主申告による減額制度もあり、違反に気づいた際の迅速な対応が求められます。
・悪質な場合には懲役や罰金などの刑事罰も
悪質な虚偽・誇大広告(第66条違反)には、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」という刑事罰が科される可能性があります。未承認医薬品の広告(第68条違反)の場合はさらに重く、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」となります。
これらは、違反行為を行った実行者だけでなく、法人そのものにも罰金刑が科される「両罰規定」が適用されます。また、行政から違反広告の中止や再発防止策を命じる「措置命令」が出されることもあり、これに従わない場合はさらに重い罰則が科されます。
・ブランドイメージの失墜が取引や採用に影響する
薬機法違反で摘発されると、その事実は厚生労働省のウェブサイトで公表され、ニュースやSNSで瞬く間に拡散します。「違法な広告で商品を売っていた企業」というデジタルタトゥーは、一度刻まれると簡単には消えません。
その結果、百貨店やドラッグストアなどの小売店から取引停止を言い渡されたり、OEMメーカーから製造を断られたりするケースもあります。さらに、企業のコンプライアンス姿勢を重視する求職者から敬遠され、優秀な人材の採用が困難になるなど、事業基盤そのものが揺らぐ事態に陥るリスクがあるのです。
最新情報の収集とリスク管理に活用できる専門展示会
薬機法の規制は年々複雑化しており、社内のリソースだけで全てをカバーするのは困難になりつつあります。特に、新規参入や新商品開発においては、企画段階から「薬機法をクリアできるか」を判断できる専門的な知見が不可欠です。
日本最大級の化粧品専門展「COSME Week」は、こうした課題を解決するための絶好の場です。会場には、薬事コンサルティングを行う専門企業や、薬機法に準拠した処方開発に強みを持つOEM/ODMメーカーが多数出展しています。
まとめ
薬機法は化粧品ビジネスの根幹をなす法律であり、その目的は製品の「品質・有効性・安全性」の確保にあります。法令を正しく理解し、プロアクティブに対応することが、消費者からの信頼を獲得し、持続的なビジネス成長を実現する鍵となります。
COSME WEEKのような専門性の高い場で最新情報を収集し、信頼できるパートナーと連携することが、リスクを競争優位に変えるための有効な手段です。正しい知識を武器に、健全な市場の発展に貢献しましょう。
【記事監修者】
井出 晃子
東京薬科大学卒業後、化粧品業界へ。㈱ノエビアでの品質管理、ベンチャーでの化粧品事業立ち上げを経て、㈱アルビオンで15年間海外薬事・広告表現まで、幅広く経験後、独立。
現在は、薬機法・景表法を軸にした広告表現の研修や、現場で迷わない判断基準づくりを支援。営業・販促・制作など非薬事部門にも届く実務寄りの説明により、社内の制作フローをスムーズにすることを得意としている。
また、食品企業など異業種から化粧品事業に参入する企業向けに、広告規制の基礎から企画・コピー設計まで一貫して学べる研修(リスキリング助成金活用含む)も提供。事業立ち上げ初期の“広告表現で迷わないための社内基盤づくり”もサポートしている。
著書『化粧品・医薬部外品の広告表示ガイドブック2023』。
美容薬機法マスター講座 主催。https://www.koukoku894.com
▼この記事をSNSでシェアする
