化粧品パッケージ設計の選び方 販路別デザインと表示の最適解
この記事のまとめ
化粧品のパッケージ設計では、品質保持や使いやすさに加え、表示の読みやすさ、販路への適合性、環境への配慮を総合的に検討する必要があります。この記事のポイントは以下の通りです。
- 店頭では視認性、ECでは配送耐性、海外では現地の表示要件や輸送環境への対応が主な検討事項です。
- 表示情報に優先順位をつけ、小型容器では外箱やラベル、台紙などを含めて表示スペースを確保します。
- 環境配慮では、容器の軽量化、詰替え・付替えへの対応、再生材の利用、回収スキームなどを比較します。
- 販路とブランド方針を軸に仕様を絞り込み、OEMメーカーや容器会社と確認しながら最適な設計を検討します。
化粧品パッケージ設計で問われる論点
・商品企画担当者が直面する設計課題
商品企画担当者がパッケージ設計を検討する際は、中身の品質保持、使いやすさ、表示要件、販路適性を同時に成立させる必要があります。化粧品の容器は、使い終わるまで製品の品質を一定に保ち、使用者が最後まで安心して使い切る役割を担っており、容器の形、大きさ、重さ、硬さなどは使用時や保管時を想定して設計されます(参照*1)。
容器の大きさを変えれば表示面積が変わり、資材を変えれば識別マークや環境配慮の評価も変わるため、初期段階から複合的に検討する必要があります。
・設計・表示・販路適性の三要素
パッケージ設計を整理する際は、設計、表示、販路適性という三つの要素に分けて検討すると論点を捉えやすくなります。
設計面では、中身の品質保持、開閉や取り出しのしやすさ、容器の強度、製造のしやすさなどを確認します。表示面では、商品情報を読みやすく配置できるスペースを確保し、デザイン確定前に必要事項を整理することが重要です。
販路適性は、店頭陳列、EC配送、海外輸出でそれぞれ異なる要件が発生する領域です。例えば、店頭では視認性や陳列のしやすさ、ECでは配送時の破損や液漏れへの対策、海外では輸送環境や現地向け表示への対応が主な検討事項となります。三要素を分けて比較し、OEMメーカーや容器会社などと確認しながら仕様を決めることで、後工程での手戻りを抑えやすくなります。
販路別のパッケージ設計の考え方
・店頭販売の設計要件
店頭販売向けのパッケージ設計では、視認性と必要な表示情報の両立が主要な論点となります。
棚での訴求力を高めるデザイン領域を確保しながら、必要な情報を読みやすく配置するためには、外箱の採用可否や容器形状の選択を初期段階で決めることが実務上の起点となります。あわせて、陳列時に正面となる面、棚の奥行きや高さ、照明による見え方も確認します。試作品やモックアップを実際の陳列環境に近い条件で確認し、商品名や特徴が認識しやすいか、表示内容を無理なく収められるかを検証することが重要です。外箱を採用する場合は、訴求力だけでなく、資材費や組立工程、輸送効率も含めて比較します。
・EC・通販の設計要件
EC・通販向けの設計では、配送耐性と過剰包装の抑制が同時に求められます。
たとえばAmazon.comのShips in Product Packaging(SIPP)では、Amazonによる追加梱包をせず、商品本来のパッケージで安全に配送できることを前提に、包装形状や強度、試験方法などの認定要件が定められています(参照*2)。
EC販路では、店頭のような外箱の装飾よりも、単体で配送に耐える構造とリサイクル適性が評価軸になりやすい傾向があります。店頭とECを併売する場合は、共通仕様と販路別仕様の分岐設計を検討することが選択肢の一つとなります。
・海外販路の設計要件
海外販路では、輸出先ごとに表示言語や必要な情報、使用できる表現などが異なるため、パッケージ設計の初期から現地要件を織り込む必要があります。
あわせて、輸送期間や温度・湿度の変化、荷扱いの条件を想定し、容器の強度や液漏れ対策、外装の仕様も検討します。国内向けと海外向けで共通の容器を使用する場合は、ラベルや外箱のみを切り替えられる設計にすると、仕様を管理しやすくなります。輸出先の要件は国や地域によって異なり、更新される場合もあるため、デザイン確定前に現地代理店や輸出支援事業者、規制当局の一次情報を確認することが重要です。
デザインと表示の最適解
・表示情報とデザイン領域の整理
パッケージに載せる情報は、購入前の判断に必要な情報、使用時に確認する情報、ブランドの訴求情報に分けて整理します。商品名やブランドロゴ、商品の特徴をすべて同じ強さで見せると、視線の誘導が難しくなるため、情報の優先順位を決めることが重要です(参照*3)。
正面には商品を識別するための情報を配置し、側面や背面には使用方法、成分情報、注意事項などをまとめる方法が考えられます。必要な情報を洗い出したうえで、容器の展開図や外箱の版面に割り当て、文字量と余白のバランスを確認します。デザイン確定前には、OEMメーカーや表示確認の担当者と原稿を共有し、追加情報によるレイアウト変更を防ぐことも重要です。
・小型容器で表示スペースを確保する方法
小型容器では、表示面積が限られるため、情報を単純に縮小するのではなく、容器、ラベル、外箱、台紙などの役割を整理する必要があります(参照*4)。外箱を採用すると表示スペースや店頭での訴求面を確保しやすくなる一方、資材費、組立工程、輸送時の容積、廃棄物が増える場合があります。外箱を設けない場合は、ラベルの形状や貼付位置を工夫し、使用時に必要な情報を確認しやすい構成を検討します。容器形状を決める前に必要な文字量を把握し、実寸のモックアップで読みやすさやラベルの剥がれ、曲面による文字のゆがみなどを確認することが重要です。
・読みやすさを高めるレイアウト設計
表示の読みやすさは、文字の大きさだけでなく、書体、行間、余白、背景色とのコントラスト、容器の形状や光の反射などによって左右されます。ISO 19809は、消費者向け包装の情報・表示について、幅広い人の感覚面や認知面を考慮したアクセシブルデザインの考え方を示しています(参照*5)。デザイン時には、重要な情報を複数の装飾や背景画像に重ねず、内容ごとにまとまりをつくることが基本です。光沢の強い素材や透明容器では、照明や中身の色によって文字が読みにくくなる場合があるため、画面上の確認だけでなく、実物に近い素材で検証します。店頭照明、洗面所、浴室など、実際の購入・使用環境を想定してモックアップを確認し、年齢や視力の異なる複数の人から意見を集めると改善点を把握しやすくなります。
環境配慮設計とリフィル対応の選択肢
・プラ新法・設計認定の要件
環境配慮設計は、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律に基づく制度として整備が進んでいます。
家庭用化粧品容器の認定基準では、シャンプー、ヘアリンス、ボディソープ、ハンドソープの容器を対象に、本体容器、ボトル状の詰替え容器、フィルム状の詰替え容器ごとに要件が定められています。認定を検討する際は、該当する容器区分を確認したうえで、軽量化、再生材等の使用、素材構成、分離のしやすさなど、複数の認定ルートから仕様に合うものを選ぶ必要があります。認定を目指さない場合でも、容器の環境配慮を検討する際の判断材料として参照できます(参照*6)。
・リフィル・回収スキームの事例
リフィル対応や回収スキームは、環境配慮とブランド訴求を両立させる選択肢として国内外で採用が広がっています。
国内では、資生堂が使用済みプラスチック容器を回収して新しい容器へ再生する循環モデル「BeauRing」の試験運用として、2023年4月から神奈川県横浜市の百貨店や化粧品店など10カ所で全ブランドを対象とした店頭回収を開始しました(参照*7)。同社は、ボトル製造と中味液充填をワンステップで行うLiquiForm®を化粧品として世界で初めて採用し、本体容器とレフィル容器の2体構造として本体容器を繰り返し使うことで、使用後に廃棄するプラスチック量を92%削減し、サプライチェーン全体では従来の同容量つけかえ容器と比べて約70%のCO₂排出量削減を示しています(参照*8)。海外では、ロレアルグループのランコム アプソリュ ロンジェヴィティ ソフトクリームのレフィル1個購入により、標準ジャーの買い替えと比べてガラス100%、金属95%、プラスチック42%、段ボール36%の削減が示され、同グループのリフィル対応品目数は2019年から2025年にかけて3.7倍に増加しています(参照*9)。
これらの削減率は各社の条件下での目安であり、製品カテゴリや容器仕様によって変動します。導入検討時は、販路と使用シーンに沿った試算が必要です。
パッケージ設計の判断基準と選び方
・販路・ブランド軸での判断基準
パッケージ設計の選び方は、販路とブランド方針を軸にした判断基準で整理できます。判断軸の例としては次のような整理が考えられます。
- 店頭陳列を主軸とする場合は、視認性の高い外箱と法定表示の両立を優先し、小型商品では添付文書やディスプレイカードの活用を検討する
- EC単独販売を主軸とする場合は、単体配送に耐える構造とリサイクル適性を優先し、外箱の簡素化を検討する
- 海外販路を含める場合は、輸出先ごとの表示言語と必須記載事項を初期段階で織り込む
- 環境配慮を重視する場合は、詰替え・付替え可能な設計や再生材利用など、設計認定基準の評価軸を参照する
・設計時の失敗例と回避策
設計時の失敗を避けるためには、要件の抜け漏れが起きやすい領域を事前に把握しておくことが有効です。
表示面では、化粧箱等に入れて中の容器の表示が見えなくなる場合、外箱や包装紙にも同様の事項を表示する必要があり、外箱の表示事項は他の文字・図画等に比較して見やすい場所に、購入者・使用者の誰もが読みやすく理解しやすい用語で表示することが求められます(参照*10)。EC配送面では、Amazonの梱包プログラムにおいて、液体商品や円筒形・球状の商品はフレキシブル包装の対象外とされ、これらの資材が含まれる場合はISTA 6-A試験に合格するための5つの完全なサンプルが必要とされる、といった追加要件が示されています(参照*2)。
回避策としては、法定表示、識別マーク、配送要件、環境配慮設計のチェック項目を設計初期にリスト化し、外箱の有無や容器形状を確定する前に照合する運用が考えられます。
おわりに
化粧品のパッケージ設計は、中身の品質保持と使いやすさを守りながら、法定表示、識別マーク、販路ごとの配送要件、環境配慮設計を同時に満たす必要のある総合的な工程です。設計、表示、販路適性という三要素を分けて整理し、初期段階から複合的に検討することで、後工程での手戻りを抑えやすくなります。
販路とブランド方針を軸に、外箱の有無、リフィル対応、輸出先ごとの表示要件などの選択肢を比較検討することが、実務上の判断の起点となります。数値や認定基準はいずれも条件により変動するため、一次情報を確認しながら設計を進めることがポイントです。
お知らせ
化粧品とパッケージ設計を同時に考えることで、原料・容器・OEMや販路を比較検討し、担当者と直接相談できる場で効率的に最適案を見つけられます。情報収集やサンプル比較で具体的な開発判断が促進されます。
COSME Weekでは、OEM・原料・パッケージ・販路支援企業が出展しており、実際に担当者と直接相談・比較できます。
化粧品開発を具体的に進めたい方は、ぜひ会場で情報収集・比較検討にお役立てください。
参照
- (*1) 資源循環社会のために -包装容器-
- (*2) https://cdn.amazon-packaging.com/12/5f/f9b8d2504b27a679b9ad8b1c75e0/11-1-vendor-
- (*3) koara.lib.keio.ac.jp – 慶應義塾大学学術情報リポジトリ(KOARA)
- (*4) https://www.jcia.org/user/common/download/business/guideline/ingredientlabelling
- (*5) https://www.iso.org/standard/66239.html
- (*6) https://plastic-circulation.env.go.jp/wp-content/themes/plastic/assets/pdf/03_%
- (*7) Shiseido Starts Pilot Test of Circular Model Project “BeauRing” for Plastic Cosm
- (*8) https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/3841_v1k83_jp.pdf
- (*9) L'Oréal – L’Oréal calls on consumers around the world to #jointherefillmovement
- (*10) 化粧品ビジネスの新規参入サポート|行政書士宮本えり事務所 – 【専門家監修】化粧品のラベル表示について|お役立ち記事|化粧品ビジネスの新規参入サポート|行政書士
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