化粧品を構成する成分とは?注目されている成分の特徴や選び方を解説

「化粧品はどんな割合で構成されているのか」「注目されている化粧品の成分について、特徴や効能が知りたい」と考えている方も多いでしょう。本記事では、化粧品の分類や成分表示といった基礎知識をはじめ、化粧品を構成する成分について解説します。また、注目すべき化粧品の成分の特徴や選び方など、化粧品のトレンドをマーケティング視点で解説しますので、ぜひ化粧品開発の参考にしてください。

●目次

化粧品と医薬部外品・医薬品の違いは?

化粧品、医薬部外品、医薬品は薬機法(医薬品医療機器等法)で区分されており、それぞれ目的や効能の範囲は以下のように異なります。

区分

目的

承認・表示規制

広告可能表現

化粧品

清潔・美化・保護目的

全成分表示義務、製造販売届出が必要

美肌・保湿など効果を断定しない範囲の表現のみ可能

医薬部外品

(薬用化粧品)

予防・衛生目的

(例:肌荒れ予防、抗菌、消臭)

有効成分とその効果について厚労省の承認が必要

「肌荒れを防ぐ」など特定効果の表現が可能

医薬品

病気の診断・予防・治療

厚労省の承認が必要

病気の治療効果をうたえる

一般的なスキンケアやメイクアップ用品は化粧品に該当します。また、効果・効能が認められた特定の成分を含み、化粧品としての機能も併せ持っている商品は医薬部外品(薬用化粧品)に分類されます。

医薬品は化粧品と関連が薄いイメージがあるかもしれません。しかし、医薬品の中にもスキンケアに関連する製品は存在します。例えば、「医療用医薬品(メディカルコスメ)」は、医師のカウンセリングを受けたのち、処方箋によって薬局で購入できる医薬品です。

また、薬局やドラッグストアで薬剤師等の助言を得て直接購入できる白色ワセリンや高濃度尿素配合の皮膚治療薬などは、「一般用医薬品(市販薬・OTC医薬品)」に該当します。

このように、一般的に化粧品と呼ばれる製品は、成分や目的、販売方法などによって、化粧品、医薬部外品、医薬品の3つに分類されます。

出典:日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年度版」

化粧品の全成分表示について

現在の化粧品の成分表示は、日本化粧品工業連合会が作成した「化粧品の成分表示名称リスト」などを利用し、全成分の日本語表示が定められています。成分は配合量の多い順に記載する義務がありますが、配合量が1%以下の成分や着色料は順不同での表示が許可されています。

全成分表示は消費者に安心をもたらす重要情報であるため、製品を企画する際は使用する原料の名称(INCI名/和名)を事前に確認し、パッケージデザインへの反映が大切です。容器が小さくて書ききれない場合や、試供品として提供・販売する場合は外箱や添付文書に表示する特例もありますが、必ず消費者に全成分の情報を提供しなければいけません。

全成分表示により、マーケティングにおいては「無香料」「パラベンフリー」といった安全性につながる訴求も可能です。

出典:厚生労働省「○化粧品の全成分表示の表示方法等について」

出典:日本化粧品工業会「化粧品の成分表示名称リスト」

化粧品を構成する基本成分とは

多くのスキンケア製品では7〜9割が水性成分、油性成分、界面活性剤によって構成されていることがほとんどです。この3つの成分は「基本成分」と呼ばれ、成分の選択や配合比によって、製品の使い心地や保湿力の最適化が目指せます。

近年では製品を売り出す際に、「純水使用」「オーガニックオイル配合」といった基本成分を訴求するマーケティングも増えています。3つの基本成分の役割と、各成分の具体的な成分名を把握しておきましょう。


水性成分

水性成分は水に溶けやすい性質を持っており、肌の保湿を目的として配合される成分です。代表的なものとして精製水があげられますが、温泉水や果実水、ハーブ水をベースとすることで、ほかの化粧品と差別化した製品も見られます。

配合比は製品の特性や目的によって異なるものの、保湿の役割が大きい化粧水では水性成分の割合を高めるのが一般的です。


油性成分(エモリエント)

油性成分(エモリエント)とは、オイルなどの水に溶けない性質を持つ成分のことで、皮膚表面に保護膜を作り、水性成分の蒸発を防ぐため、潤いを長時間キープするためには欠かせません。化粧水の次のステップとして使用する乳液・クリームは、油性成分が比較的多い傾向がありますが、化粧水にも油性成分を多く配合する製品もあります。そのような油性成分が多い化粧水は「しっとりタイプ」として販売されています。


界面活性剤(乳化剤)

界面活性剤(乳化剤)は、水になじむ性質と油になじむ性質の両方を兼ね備えた成分です。水性成分と油性成分を合わせてもうまくなじみませんが、界面活性剤を加えると乳化が起こり、3つの成分が混ざり合って化粧品のベースが完成します。

多くの化粧品において、界面活性剤は製剤の安定性や使用感の調整に欠かせない成分のひとつとされています。水性成分と油性成分を均一に混ぜ合わせるために、重要な役割を担っています。ただし、界面活性剤の配合量が多すぎると、肌の必要な潤いや皮脂まで奪う可能性があるため、配合比は慎重に検討しなければなりません。

基本成分以外に化粧品に配合されている成分は?

基本成分以外の1〜3割の部分は、化粧品の機能や品質を高めるための成分が配合されます。ただし、基本成分以外の機能性成分や安定化成分、その他の成分は化粧品基準で使用制限が定められているため、規制に沿った範囲で配合し、安全性の確保が必要です。

化粧品開発においては、成分ごとの効果や配合上限(最大配合量)、消費者ニーズを踏まえながら、バランスの良い処方設計を心がけましょう。

出典:厚生労働省「化粧品基準」


機能性成分

機能性成分とは、美白、肌荒れ防止、ニキビ防止、日焼け防止、育毛など特定の目的に対して効果・効能が認められた成分を指します。これらの成分は「美容成分」や「有効成分」と呼ばれることもあり、医薬部外品(薬用化粧品)に配合されて効果が承認されている場合もありますが、整肌や保湿などを目的として一般の化粧品にも多く使用されています。

機能性成分は配合量に比例して効果が増大するわけではありません。入れすぎると刺激になる可能性がある成分に関しては、最大配合量が決められているケースもあります。


安定化成分

安定化成分は、化粧品の変質を防ぐ目的で配合される成分で、主に防腐剤や酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、増粘剤などが挙げられます。それぞれの成分の役割や、よく使われる成分については、以下のとおりです。

 

役割

よく使われる成分

防腐剤

菌の繁殖を防ぎ、化粧品の品質を保つために配合される。

パラベン、フェノキシエタノールなど

酸化防止剤

油分を含む化粧品が空気に触れたときの酸化を防ぐために配合される。

ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンCなど

キレート剤

化粧品の品質を低下させる金属イオンから、化粧品を守る役割がある。

EDTA-2Na、クエン酸など

pH調整剤

物質の酸性・アルカリ性の度合いを表すpH値を人間の肌に近い値(約pH4.0~6.0)に調整するために配合される。

クエン酸、乳酸、アンモニア水など

増粘剤

化粧品のテクスチャーを決める役割がある。適度なとろみを加え機能性を安定させる効果、乳化の分離を抑制する働きも期待できる。

セルロース誘導体など


その他の成分

化粧品に配合されるその他の成分には、香料や色剤、温感・冷感成分などがあり、化粧品の見た目や香り、使用感を良くするために配合されます。主な冷感成分は、気化熱を利用し物理的冷感剤として機能するエタノールと、冷感受容体を刺激する感覚的冷感剤として機能するメントールやハッカ油です。冷感成分は清涼感や引き締め効果、血行促進作用が期待されますが、過剰に使用すると刺激になることがあります。

そのため、敏感肌用の化粧品には香料や着色料が入っていない無添加のものや、低刺激の成分が選ばれるケースが多いです。

出典:日本化粧品技術者会「清涼化剤 [cooling agent]」

化粧品や医薬部外品(薬用化粧品)に配合する成分の選び方

消費者のニーズに応える化粧品を作るためには、成分選びがもっとも重要です。最近では「成分買い」をするケースが増え、ブランド名より成分表示を重視する消費者も存在します。そのため、成分選びにも配慮した化粧品や医薬部外品(薬用化粧品)の開発を進めましょう。


差別化を意識して成分を選ぶ

化粧品市場で他社製品との差別化を図るためには、独自性のある成分や技術の採用が重要です。例えば、植物幹細胞由来成分やバイオテクノロジー由来のペプチド、さらにはAI技術で設計された合成分子など、先端素材の配合は製品に話題性や付加価値をもたらします。

また、リポソーム化やナノ化などの高度な技術での成分の安定化や、浸透性の向上は、他製品との差別化に有効です。こうした独自性はユーザーに新しさや特別感を訴求でき、ブランドの競争力強化につながります。


科学的エビデンスのある成分を選ぶ

近年、化粧品選びにおいても「科学的根拠(エビデンス)」を重視する風潮があります。抗シワ、抗炎症、美白など、効果の裏付けが必要な訴求については、臨床試験データや第三者試験の結果を公開することでユーザーの信頼を獲得できるでしょう。

レチノール、ビタミンC(誘導体)、ペプチド、EGF(上皮成長因子)、ヒアルロン酸、セラミドなど、効果が科学的に裏付けられた機能性成分(有効成分)は強い訴求力を持っています。ブランドコンセプトや企画に適した成分を検討し、説得力のある製品開発を目指しましょう。


安全性や環境配慮を重視して成分を選ぶ

マーケティングにおいて、化粧品成分の安全性や環境配慮を重視する「クリーンビューティー」を意識する人への考慮も大切です。特に海外のミレニアル・Z世代に該当する人は、製品の成分の安全性や持続可能性を重視する傾向があります。

毒性の低い無添加処方や海洋生分解性の原料、再生可能資源由来の成分の使用、さらにはヴィーガン認証の取得などが、ブランドの訴求力を高める要素となり得るでしょう。

主な化粧品や医薬部外品(薬用化粧品)の成分

近年、美容成分や有効成分を配合し、効果・効能の訴求ができる医薬部外品(薬用化粧品)が注目を集めています。中でもエイジングケアや美白ケアなど、特定の肌悩みに対応するスキンケアアイテムが増えており、成分選びや配合技術の工夫が製品の差別化やブランド価値の向上につながっています。


ブライトニング成分

ブライトニング成分は、シミ・そばかすを防ぎ、明るく透明感のある肌を目指すために配合されます。近年は「シミ予防」と「炎症ケア」を両立させる処方や、化粧ノリの向上、肌内部からの光感演出といったトレンドが重視されています。

ビタミンC

化粧品に配合されるビタミンCには、アスコルビン酸などの「ピュアビタミンC」と、安定性を高めた「ビタミンC誘導体」があります。ビタミンC誘導体には「リン酸アスコルビルMg」「3-O-エチルアスコルビン酸」などがあり、酸化しにくく、安定性や浸透性を高めた処方で採用されるケースが多いです。

また、ビタミンC誘導体は美白*作用や抗酸化作用、皮脂抑制作用が報告されていることもあり、肌の透明感やキメを整える目的でさまざまな製品に使用されます。医薬部外品では、シミ・そばかすを防ぐ目的での使用が多く、製品の訴求力を高める成分です。

出典:化粧品成分オンライン「ビタミンC誘導体の解説と成分一覧」

*メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ

ナイアシンアミド

ナイアシンアミドは水溶性ビタミンB3の一種で、肌のバリア機能をサポートし、外部刺激から肌を守るために働く成分です。また、メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ効果が期待できるほか、ターンオーバーの正常化を助けてくれるため、毛穴の目立ちにも有効です。

このように、多様な肌悩みに対応できることから、美白*、シワ改善、肌荒れ防止を目的とした有効成分(機能性成分)として医薬部外品に使用されたり、保湿や整肌目的で化粧品に配合されたりする場合もあります。

出典:化粧品成分オンライン「ナイアシンアミドの基本情報・配合目的・安全性」

*メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ


抗炎症成分

抗炎症成分は、肌の赤みや刺激を抑える効果が期待できるため、紫外線ダメージやニキビ肌のケアを目的に配合されます。医薬部外品(薬用化粧品)では、その効果を示す根拠を持つ有効成分として承認されており、肌トラブルの予防や改善を目的とした製品に使用されます。

トラネキサム酸

アミノ酸誘導体であるトラネキサム酸は、もともと肌荒れ防止成分として知られていましたが、メラノサイト活性化因子(プラスミン)の作用を抑制することがわかりました。その結果、シミ・そばかすを防ぐ効果が認められ、美白*有効成分として医薬部外品(薬用化粧品)への配合が増えました。

近年では炎症による肌の色ムラを防ぎ、肌の透明感を守る成分としても注目されています。さらに、敏感肌向け製品にも活用されるなど、美白*と肌荒れケアを兼ね備えた多機能成分となっています。

出典:化粧品成分オンライン「トラネキサム酸の基本情報・配合目的・安全性」

*メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ

グリチルリチン酸

グリチルリチン酸は、甘草由来の天然成分で、肌荒れ防止やニキビ予防を目的とした医薬部外品に配合される成分です。「グリチルリチン酸2K」や「グリチルリチン酸ステアリル」といった誘導体は、保湿や整肌を目的として配合されることがあります。

グリチルリチン酸2Kは水溶性で、肌への刺激が少なく、化粧水や乳液、日焼け後のスキンケア製品に幅広く使われています。油溶性のグリチルリチン酸ステアリルはクリームなどに配合され、しっとり感や持続性が高められます。

出典:化粧品成分オンライン「グリチルリチン酸の基本情報・配合目的・安全性」

ツボクサエキス(CICA)

ツボクサの葉や茎から抽出されたツボクサエキス(CICA)は、肌の鎮静や保湿のため整肌成分としてスキンケア製品に配合されます。韓国コスメの人気をきっかけに広く知れわたり、敏感肌ケアや肌のバリア機能をサポートするアイテムの主要成分として注目されました。

ツボクサエキスはマデカッソシドやアジアチコシドなどの成分を含み、創傷治癒促進や抗酸化作用が報告されています。また、肌のバリア機能を整え、外的ストレスから守る作用が期待され、敏感肌用製品や低刺激処方にも多く採用されています。

出典:化粧品成分オンライン「ツボクサエキスの基本情報・配合目的・安全性」


エイジングケア成分

エイジングケア成分は、年齢とともに現れるシワ、たるみ、シミなどの悩みに対応するための成分です。肌のハリやうるおいを保つ成分や、ターンオーバーをサポートする成分が中心で、機能性を裏付けるデータや長期的に使用した場合の安全性が選定のポイントです。

レチノール

レチノールはビタミンAの一種で、シワ改善効果を持つ医薬部外品の有効成分です。化粧品では「パルミチン酸レチノール」などの誘導体が安定性や刺激の少なさを考慮して配合される場合も多く、エイジングケア製品において人気を誇る成分です。

レチノールはターンオーバーを促し、コラーゲン生成をサポートする作用がありますが、光や熱に弱く酸化しやすい点が欠点です。そのため、近年ではリポソーム化やカプセル化技術で安定性を高めた処方が増え、刺激を抑えつつ持続性のある効果を狙っています。

出典:化粧品成分オンライン「レチノールの基本情報・配合目的・安全性」

ヒアルロン酸

ヒアルロン酸は高い保湿力を持つ成分で、スキンケア、ヘアケア、ボディケアと幅広い製品に配合されています。化粧品には「ヒアルロン酸Na」や「加水分解ヒアルロン酸」など、浸透性や持続性に優れた種類が使われ、肌にうるおいとハリを与える役割を担います。

ヒアルロン酸は高分子から低分子までさまざまな分子サイズで製品化されており、分子量によって保湿層形成、角質層浸透、肌表面の保護膜形成など機能が異なる点が特徴です。複数の種類を組み合わせる処方で多層的な保湿ケアを実現する製品もあります。

出典:化粧品成分オンライン「加水分解ヒアルロン酸の基本情報・配合目的・安全性」

セラミド

セラミドは肌に存在する保湿因子のひとつで、乾燥などから肌を保護し、うるおいを保つ役割を担います。人の細胞間脂質の比率に合わせて、肌になじみやすいように作られた「ヒト型セラミド」を化粧品に配合する場合もあります。

また、セラミドには「セラミドNP」「セラミドAP」「セラミドEOP」など複数の種類があり、これらを組み合わせると、肌の水分保持機能やバリア機能が強化されます。

出典:化粧品成分オンライン「セラミドの解説と化粧品配合セラミド一覧」

まとめ

化粧品と医薬部外品(薬用化粧品)、医薬品は効果・効能の表示や成分の目的に明確な違いがあります。中でも、美容成分や有効成分を配合し、科学的エビデンスに基づいた効果を訴求できる医薬部外品(薬用化粧品)は、現在の化粧品市場でのトレンドです。

また、消費者の中には成分を重視して購入を検討する人も増えており、他社製品との差別化や安全性、トレンドを意識した成分選びが重要です。最新のマーケット動向や成分情報を収集して化粧品開発に役立てるなら、展示会への参加も有効な手段といえるでしょう。


【記事監修者】

赤星 恵美子(あかぼし えみこ)

化粧品開発コンサルタント

化粧品業界歴20年。大手化粧品メーカーおよびオーガニックコスメブランドにて、商品企画・処方開発・品質管理・コンサルティング営業など幅広い業務に従事。現在は「ELATE COSME WORKS」代表として、企業向けの化粧品開発コンサルティングやマーケティング支援を行うほか、美容・化粧品分野の各種メディア記事の監修も多数手がけている。

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